2016 年 31 巻 2 号 p. 134-140
習慣性顎関節脱臼に対する治療には,これまで非観血的処置や観血的処置として多くの手技が施行されてきた。しかし再発の可能性や高齢者への侵襲の強度などを考慮すると手技の選択肢が制限されることも多く,特に非観血的手技では再発を認めることも多い。今回施行したHasson & Nahlieli法に準じた顎関節腔内自己血注入療法は,手法も煩雑でなく侵襲が比較的少ない治療法として,これまで良好な結果が報告されている。今回われわれは,習慣性顎関節脱臼を呈する高齢者3例に対し,顎関節腔内自己血注入療法を手技および術後管理を再検討して施行した。術後3~4カ月経過観察を行ったが,経過観察中の再発は認められず良好な結果を得た。本治療法は手技が簡便であり侵襲も少なく,習慣性顎関節脱臼に対する治療法として有用であると考えられた。