2017 年 32 巻 2 号 p. 72-79
本研究では,学生の感想文から本学で行っている老年歯科医学実習の有用性や改善点についての評価を行うことを目的に,学生に対して自由記述アンケート調査を行い,テキストマイニングの手法を用いて検討した。方法として,歯学部5年生を対象とした高齢者歯科学実習後に自由記述アンケート調査を実施した。その結果を基にテキストマイニングの手法を用いて解析し,サブグラフ検出と媒介中心性による共起ネットワーク図描画を行った。その結果,サブグラフ検出では全体の感想が7個の話題にグループ分けされ,多様な内容が示された。特に “もう少し” と “回数” “増やす” “臨床” が共起しており,それら感想の内容は実習回数の増加や症例写真の増量といった実習に対する要望であった。媒介中心性では,“実際” “実習” “高齢者” “歯科” “体験” “人” “悪い” という単語で中心性が高く,またこれらの単語間の共起関係もネットワーク図上に示された。これらの単語が共起している感想は,主に自身の体験を通じた高齢者への理解を示す内容であった。以上の結果から,学生は多様な感想を記述しており,特に自身の体験を通じた高齢者への理解を示す内容を中心に記載していることが示唆され,高齢者への理解の促進や教育的かつ啓発的効果が期待される点において,本実習の有用性があると考えられた。一方で,限られた時間でできるかぎりの体験を学生に提供するために,実習カリキュラムを改善する必要性が再確認された。