目的:本研究は,一般歯科医院に来院する65歳以上の高齢者に対し,認知機能スクリーニング検査を行い,軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)の疑いのある者と認知機能低下者の割合を調査し,口腔内状況などとの関連を調べることが目的であった。
方法:全国の15歯科医院を受診した高齢者のうち,同意を得られた者に調査した。認知機能スクリーニング検査は,Montreal Cognitive Assessment日本語版(MoCA-J)を用いた。
結果:65~84歳の181人を検討対象とした。MCIの疑いのある者は65~74歳群で41.5%,75~84歳群で49.3%であった。認知機能低下者の割合は,65~74歳群で8.5%,75~84歳群で26.7%であった。加齢とともに増加(p<0.001)していた。認知機能低下者は,健常者と比べて現在歯数が少なく(p=0.009),「主観的口腔乾燥」が4.89倍,「口の中に痛みを感じたことがある」が3.19倍のオッズ比であった。しかし,健常者とMCIの疑いのある者では口腔内状況などの違いはなかった。
結論:認知機能低下の早期発見には,年齢,現在歯数の減少,「主観的口腔乾燥」および「口の中に痛みを感じたことがある」などの要因が手がかりとなる可能性がある。