老年歯科医学
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調査報告
当科における薬剤関連顎骨壊死症例の検討
―がん患者を主とした4年間の調査―
久野 彰子服部 馨太田 修司髙澤 理奈原田 枝里
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2019 年 34 巻 3 号 p. 422-427

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抄録

 超高齢社会の日本において死因の一位はがんである。がんにおいて骨転移の治療に用いる骨吸収抑制薬では,有害事象として顎骨壊死の発症が問題となっている。がん診療連携拠点病院内の歯科においては,薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を診る機会が比較的多く,2015年4月から4年間に骨吸収抑制薬使用前や使用中の口腔内管理,または顎骨壊死の症状で医科から診療依頼があった266件中30名にMRONJが認められた。今回,この30名の性別,年齢,原因薬剤を投与した疾患と薬剤の種類,発症部位,ステージ分類,発症要因,薬剤開始からMRONJ発症までの期間,当科での処置について調査した。

 MRONJと診断した30名は男性14名,女性16名,平均年齢69.6歳であり,原疾患は乳癌が最も多く11名,次いで前立腺癌が8名であった。顎骨壊死はステージ2で下顎に発症していることが多く,発症要因は抜歯が12名,骨隆起や義歯が7名,歯周炎などの感染が7名,不明が4名であった。薬剤投与期間が当院で把握できた19名中,1年未満の比較的早期にMRONJを発症した者が5名いた。MRONJの処置では,保存的治療が16名,外科処置も行った者が11名おり,治癒,または改善した者は合わせて16名であった。なお,調査期間中に原疾患にて10名が死亡している。

 今後,MRONJの予防対策や,全身状態に応じた治療方法についてさらに検討していく必要がある。

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© 2019 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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