老年歯科医学
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調査報告
新たに医療保険に導入された口腔機能低下症の検査・管理の実施状況
―実施件数,必要時間および問題点―
佐藤 裕二北川 昇七田 俊晴畑中 幸子内田 淑喜
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2019 年 34 巻 3 号 p. 415-421

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抄録

 目的:2018年4月の保険改定で,歯科に新たな病名「口腔機能低下症」が認められたが,その検査・管理はあまり実施されていないのが現状である。そこで,口腔機能低下症の検査・管理の実施状況,必要時間を調査し問題点を明らかにした。

 対象と方法:日本老年歯科医学会の研修機関83カ所に調査票を送付し,2018年4~11月の調査を行った。社会医療診療行為別調査により,同年6月の実施状況を調査した。また,当科医員による検査のタイムスタディを行った。

 結果:調査票の回収率は88%,実施施設は54%,未実施は46%であった。検査算定件数は施設により差が大きく(中央値3件,最大96件),検査時間は平均24分であった。未実施の検査も多数あり,時間不足(14件),実施困難(10件)が問題点として多く挙がった。

 タイムスタディの結果は,通常検査で13分,代替検査で10分必要だった。また,記入用紙が煩雑との感想が多かった。保険導入2カ月後の実施件数はきわめて少なかった。

 考察:日本老年歯科医学会の研修機関でも実施状況は半数程度であり,実施件数も少なかった。タイムスタディでは,検査自体は比較的短時間で終わるが,高齢患者には説明や練習に時間がかかる可能性も考えられる。記入用紙の改善の必要性が感じられた。

 結論:口腔機能低下症検査の重要性が再確認されたが,検査・管理の実施状況は十分とはいえず,改善すべき問題点も明らかとなった。

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© 2019 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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