2020 年 35 巻 2 号 p. 183-190
緒言:歯科が嚥下リハの臨床現場に参画することが求められているが,実現できている個人の歯科医院は少ない。原因として,歯科医療者側だけでなく,摂食嚥下リハビリテーション(以下,嚥下リハ)対策が不十分など施設側の問題も考えられる。今回,歯科医師が施設にて嚥下リハを行うことの妨げとなっている要因を施設職員へ調査したので報告する。
対象・方法:対象は,当院が訪問歯科診療を実施している,計32施設の職員とした。調査方法として,無記名の自記式調査を実施し,訪問歯科診療の際に配布および回収した。調査内容は個人経歴,訪問歯科診療,嚥下リハについての全23問とした。
結果:396名(回収率52.8%)から回答を得た(男性101名,女性295名)。歯科医師が嚥下リハを行えると認識していた割合は43.9%で,介護士や看護師など入居者に身近な職員さえも50%未満と低値であった。また,嚥下リハの必要性は79.3%が感じていたが,実際に依頼経験がある職員は17.9%で,「今後,嚥下リハを依頼するか」との問いに対しては48.2%が「わからない」と回答した。理由は,知識不足,人員不足などであった。
考察:本調査より,施設職員は嚥下リハの重要性を理解しているが,嚥下リハの知識不足や歯科への依頼方法が周知されていないこと,施設職員の人員不足が妨げの要因だった。今後,施設職員が簡易的にかつ気軽に,歯科へ「食」に関する相談ができるシステムを構築することが喫緊の課題と考える。