老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
Print ISSN : 0914-3866
ISSN-L : 0914-3866
活動報告
某特別養護老人ホームにおける訪問歯科診療の新型コロナウイルス感染症対策
古屋 純一志羽 宏基佐藤 裕二畑中 幸子山根 邦仁池村 直也桑澤 実希
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 35 巻 4 号 p. 296-301

詳細
抄録

 新型コロナウイルス感染症の拡大により,医療は大きな転換を余儀なくされ,歯科診療もこれまで以上の感染対策が必要となった。特に訪問歯科診療では,基礎疾患を有する要介護高齢者など,重症化しやすい高齢者が対象であり,診療設備など環境面での感染対策上の問題も存在するため,訪問歯科診療が継続されない場合も少なくなかったと考えられる。しかし,不十分な口腔健康管理による口腔機能や口腔衛生の低下は,誤嚥性肺炎のリスクを高め,栄養状態や食べる楽しみの低下にも通じ,全身的な問題にも影響する。そのため,感染対策を十分に講じて,訪問歯科診療を継続することは要介護高齢者にとって重要である。当講座では,特別養護老人ホームにおける定期的な訪問歯科診療を20年間以上行っており,施設との長期間の連携関係を構築してきた。そのため,コロナウイルス感染が日本で発見されてからも,施設と当院の間で試行錯誤をしながら,入居者の口腔健康管理を継続して行うことができた。コロナウイルスの感染が蔓延していることを理由に一律に訪問歯科診療を中止するのではなく,高齢者の口腔健康管理や食支援のために最適解を施設側と模索し,柔軟な対応で訪問歯科診療を可及的に継続することは重要と考えられる。そこで本稿では,われわれのそうした一連のコロナウイルス禍での某特別養護老人ホームにて行った訪問歯科診療における活動内容について報告する。

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本老年歯科医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top