2021 年 35 巻 Supplement 号 p. 60-64
緒言:舌口底がんに対する外科的治療後に口腔の機能障害を生じた高齢患者に対し,舌接触補助床(PAP)と口腔機能訓練を行い,良好な結果を得た症例を経験したので報告する。
症例:76歳の女性。2017年に左側舌口底がんに対し切除術を施行した。術後に患側に舌の運動障害を生じ,前医にてPAPを製作した。その後,調整を繰り返すも,咀嚼,構音および嚥下障害は改善されなかった。上顎は無歯顎で総義歯が装着され,下顎は固定性ブリッジが装着されていた。旧義歯は適合,咬合,排列状態に問題はないが,後縁は短く,維持が得られていなかった。パラトグラム検査を行ったところ,発音時に口蓋部研磨面と舌との間に十分な接触を認めず研磨面形態が不良で,会話明瞭度はレベル4であった。口腔機能精密検査を行い,舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能が該当した。以上よりPAPの後縁,研磨面形態の不備,舌機能低下による咀嚼障害,嚥下障害,構音障害と診断した。床縁を改善した総義歯を製作し,粘膜調整材を口蓋部研磨面に添加して口蓋部の形態を決定し,PAPとした。加えて,口腔機能訓練を旧義歯に義歯安定剤を使用した状態で行った。
経過:PAPを装着し,会話明瞭度はレベル2まで改善した。口腔機能精密検査の検査項目は,舌口唇運動機能と舌圧,咀嚼機能,嚥下機能の項目で改善した。本症例では口腔機能訓練に加え,適切な床縁,口蓋形態を付与したPAPを装着し,術後の口腔の機能障害を改善した。