緒言:破傷風は,現代ではまれな疾患であるが,開口障害や嚥下障害などの重篤な神経筋症状を引き起こす感染症である。今回,開口障害と摂食嚥下障害が残存した重症破傷風菌感染患者に対し,回復期リハビリテーション病院にて,多職種連携にて口腔管理を実施した1例を経験したので報告する。
症例:75歳,女性。XX年4月に開口障害を主訴に前病院を受診,破傷風と診断された。全身痙攣や呼吸不全を発症し,長期呼吸器管理となった。第75病日,回復期リハビリテーション病院へリハビリテーション目的に転院し,歯科を受診した。転院時には,関節の拘縮や廃用が進行しており,ADLは全介助であり,食形態は,全粥・軟菜キザミ食であった。開口量は15 mmで,口腔内は口腔乾燥著明,衛生状態は良好であった。上顎は無歯顎,下顎は両側第一小臼歯まで残存し,義歯は紛失していた。
経過:転院後の初回嚥下造影検査(Videofluoloscopy:VF)では,嚥下反射惹起遅延,喉頭閉鎖不全と咽頭収縮不良がみられ,うすいとろみで嚥下中に喉頭侵入を認めた。食事は全粥・軟菜キザミ食,液体は中間のとろみにて摂取となり,言語聴覚士(Speech therapist:ST)による間接訓練も開始された。同時に,開口訓練と義歯新製を開始した。開口訓練により開口量は31 mmまで改善し,義歯完成後は咀嚼訓練も開始した。他のリハビリテーションによりADLも回復し,筋緊張も徐々に緩和して,最終的に自力での常食・液体の全量摂取が可能となり,自宅退院となった。
結論:本症例は,破傷風菌感染の重症化から重度の摂食嚥下障害と開口障害が出現した。その症例に対し,回復期リハビリテーションにおいて他職種と連携し,情報を共有しながら口腔管理と嚥下リハビリテーションを行うことで,最終的には常食を自己摂取可能となり,退院することができた。
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