老年歯科医学
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原著
高齢者におけるATP拭き取り検査による口腔衛生状態不良の客観的評価
藤本 けい子岩脇 有軌後藤 崇晴岸本 卓大永尾 寛市川 哲雄
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2021 年 36 巻 1 号 p. 44-52

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抄録

 目的:ATP拭き取り検査キットを用いた口腔衛生状態不良の評価方法について,口腔機能低下症で示された評価法と比較し検討することを目的とした。

 方法:2019年10月から2020年4月までの間に徳島大学病院歯科にてメンテナンスを行っている高齢者102名に対し,残存歯数の測定および口腔衛生状態不良の検査を行った。口腔衛生状態不良の検査では,舌苔付着度(Tongue Coating Index,TCI),細菌数測定装置による細菌数測定,およびATP拭き取り検査キットによるATP+AMP量の測定を行った。被検体は来院時すぐに10 mLの水で5秒間含嗽を行って吐き出した含嗽溶液と綿棒で舌背部を拭ったものとした。また,口腔内の衛生状態の包括評価として,5段階で口腔粘膜および義歯の主観的評価を行った。

 結果:舌背部の測定に関して,ATP拭き取り検査値とTCIにおけるSpearmanの順位相関係数は0.374(p<0.001),TCIと細菌数における相関係数は0.429(p<0.001),細菌数とATP拭き取り検査値における相関係数は0.388(p<0.001)であった。また,包括評価に関して,口腔粘膜の衛生状態とATP拭き取り検査(舌背部),ATP拭き取り検査(含嗽溶液),TCI,細菌数(含嗽溶液)との相関係数はそれぞれ-0.257(p=0.009),-0.274(p=0.005),-0.209(p=0.035),-0.321(p=0.001)であった。義歯の衛生状態とATP拭き取り検査値(含嗽溶液),TCIとの相関係数はそれぞれ-0.317(p=0.001),-0.232(p=0.019)であった。

 結論:ATP拭き取り検査キットによる測定は,食物残渣などを含む総合的な口腔衛生状態不良を客観的に評価できる可能性が示唆された。

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© 2021 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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