目的:口腔機能低下症が疑われる要介護高齢者に他職種が気づき歯科医療へとつなぐために,他職種が評価可能なリンシングの可否と日常生活動作能力が,介護保険施設を利用する高齢者の口腔機能低下の予測因子となりうるか否かについて明らかにすることを目的とした。
方法:対象者は介護保険施設を利用する,本研究への同意が得られた高齢者103名(男性17名,女性86名,平均年齢85.3±6.8歳)とした。調査項目は,口腔機能低下症の検査7項目,属性,認知症の重症度(Clinical Dementia Rating:CDR),リンシングの可否,日常生活動作(Functional Independence Measure:FIM)とした。
結果:口腔機能低下症の各検査項目のうち,咬合力・舌口唇運動機能・舌圧・咀嚼機能・嚥下機能のそれぞれと,リンシングの可否・FIMとの間に有意な関連を認めた(p<0.001)。ロジスティック回帰分析の結果,舌口唇運動機能および咀嚼機能に対してFIMが予測因子として抽出され(判別的中率90.3%,83.5%),嚥下機能に対してはリンシングの可否とFIMが予測因子として抽出された(判別的中率77.7%)。
結論:他職種が評価可能なリンシングの可否とFIMは,介護保険施設を利用する高齢者の口腔機能低下症の各項目の予測因子となりうる可能性が示唆された。