老年歯科医学
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臨床報告
尿路感染症による全身状態の悪化を契機として診断された広範囲の顎骨壊死を伴う超高齢者骨Paget病の1例
宮下 みどり各務 秀明
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2021 年 36 巻 3 号 p. 239-248

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抄録

 骨Paget病は,骨リモデリングの異常が生じる結果,骨の微細構造の変化と形態学的な変形を生じて骨強度が低下する疾患であり,本邦では100万人に2,3名程度とまれな疾患である。罹患頻度の高い部位は骨盤,脊椎などであり,顎骨についての報告は少ない。今回,広範囲の顎骨壊死から診断された超高齢者骨Paget病の1症例を経験した。症例は96歳,男性。自宅で体動困難になっていたところを姪が発見し,当院に救急搬送され,尿路感染症による敗血症性ショックのため入院加療となった。口腔内全体に血性の痰が強固に付着していたため,口腔病変の存在が疑われ当科紹介となった。上顎に多数歯う蝕と広範囲の骨露出がみられた。画像所見で上顎骨の腐骨と頭蓋骨のcotton wool appearanceが認められた。骨シンチグラフィでは頭蓋骨および顔面骨に異常集積を認め,高値であったことから,骨Paget病を伴う顎骨壊死と診断した。腐骨除去と歯科治療を行い,術後に生じた上顎洞口腔瘻は義歯にて閉鎖し,嚥下機能の回復を図った。家人に義歯の着脱方法と清掃方法を指導し,通院療養となった。術後2年経過しているが合併症なく,常食が食べられるなど口腔状態は改善した。高齢者の顎骨壊死ケースでは,未診断の骨Paget病が原因となっている可能性を念頭におき,注意深く全身評価を行うことが必要と考えられた。

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© 2021 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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