2023 年 37 巻 4 号 p. 320-328
目的:病院歯科はさまざまな役割をもち,高齢者歯科医療にも貢献できるが数は少ない。病院歯科の普及のために,歯科を併設している病院長の歯科業務に対する認識を明らかにする目的で質問紙調査を実施した。
方法:2022年3月7日~3月25日の間,病院歯科に関する質問紙調査を実施した。対象者は日本老年歯科医学会会員である歯科医師が常勤で所属する病院の院長とした。質問項目は,病院歯科に最も期待する歯科業務,歯科があることの最も重要な利点,改善してほしいこと,病院歯科の必要性など,病院歯科に関する14項目とした。
結果:232名の病院長に質問紙を送付し86名から回答が得られた(回答率:37.1%)。病院歯科に最も期待する歯科業務は,医科入院患者の一般歯科治療・口腔衛生管理であった。歯科があることの最も重要な利点は,医療の質の向上への貢献が最も多く,最も改善してほしいこととしては,収益性の向上であった(25.6%)。歯科の必要度の中央値は10[8-10]であった(0:まったく必要ない~10:必要不可欠)。病院歯科を増やすために必要なものは,診療報酬による裏付け,次に病院歯科の有効性を示すデータという回答が多かった。
結語:回答者の多くは歯科が必要であると考えていた。医科入院患者の一般歯科治療・口腔衛生管理への対応を歯科に期待しているため病院歯科業務として取り入れ,収益性の改善と病院歯科の有効性をデータで示すことが病院歯科の普及に必要と考えられた。