抄録:目的:当診療科では,2018年4月から2022年9月までの4年半にわたり,積極的に口腔機能低下症の検査・管理を行ってきた。そこで,社会医療診療行為別統計と,当科における算定状況とを比較することで,口腔機能低下症の検査・管理を充実させるための基礎データを得ることを目的に本調査を行った。
対象と方法:2019年,2020年,2021年,2022年の6月に発表された社会医療診療行為別統計および2018年4月以降の当科における口腔機能低下症の検査(咬合力,咀嚼能力,舌圧)・管理の算定状況を調査した。
結果:咬合圧検査以外は件数および65歳以上の算定率も増加した。しかし,社会医療診療行為別統計における前年からの増加率は2020年(約2倍)と比較して2021年では小さかった(約20%)。65歳以上の初診患者数における割合は口腔機能管理で2%を超えていたが,3種の検査では2%以下であった。65歳以上の初・再診数における割合は,すべて0.5%以下であった。当科においては,2020年はやや減少したものの咬合圧検査以外は増加してきていた。2022年における初診患者数に対する比率は,咀嚼能力検査(12.8%)は社会医療診療行為別統計の29倍,舌圧検査(14.9%)は14倍,口腔機能管理(20.4%)は7倍程度であった。当科における1人の患者への検査・管理の繰り返し算定回数は1~2回がほとんどであった。
考察:口腔機能低下症の検査・管理は普及しつつあるが,社会医療診療行為別統計よりもかなり算定率が多い当科ですら,口腔機能低下症の有病率と比べて,算定状況はいまだかなり少ない。
結論:検査・管理の算定率は,医療保険導入4年半後には増加したものの,その増加率は低下してきており,いまだ口腔機能低下症の有病率と比べて少なく,継続的な検査・管理も不十分であることが示された。
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