2023 年 38 巻 supplement 号 p. 1-8
緒言:パーキンソン病を有し,摂食嚥下障害のある高齢患者に義歯治療と摂食機能療法を実施し,良好な結果が得られたので報告する。
症例:78歳,男性。咀嚼・構音障害とむせを主訴に来院した。パーキンソン病を有し,誤嚥性肺炎にて入退院を繰り返していた。上顎部分床義歯(PD),下顎全部床義歯(CD)が装着されていた。義歯は度重なる破損・修理で劣化し,人工歯の咬耗により咬合高径の低下を認め,舌の動かしにくさを感じていた。口腔機能検査値は,口腔湿潤度以外の項目で低値を示した。さらに,嚥下内視鏡検査(VE)で嚥下機能の低下を認めた。診察・検査の結果からPD/CD不適合による咀嚼・構音障害,パーキンソン病による咀嚼・構音・嚥下障害,口腔機能低下症と診断し,義歯治療と摂食機能療法を計画した。
経過:義歯は通法に従って製作し,咬合高径は前歯部で5 mm挙上した。摂食機能療法は週1回実施し,自宅でも行うよう指導した。その結果,口腔機能検査値は改善を認めた。嚥下機能の改善はないものの,服薬状況が確認でき,食姿勢の改善,むせ時の対応が可能になり,誤嚥性肺炎の発症はなくなり,経過良好である。
考察:今回,義歯治療と摂食機能療法を並行して行い,パーキンソン病の病態を理解し,咀嚼・構音・嚥下障害に対して総合的にアプローチを行った。これによって,口腔機能が改善,QOL(Quality of Life)が向上し,誤嚥性肺炎予防につながったと考えられる。