緒言:骨吸収抑制薬による顎骨壊死(以下,ARONJ)stageⅡの治療は,2016年に発表されたポジションペーパーでは保存療法が第一選択とされてきた。しかし,近年は外科的療法を施行して良好な経過を得た報告が増加している。今回われわれは,ビスホスホネート製剤(以下,BP)を内服している高齢者にみられたARONJ(stageⅡ)に対して,早期に外科的療法を施行してQOLの向上を認めた1例を経験したので報告する。
症例:80歳の女性。2022年5月に抜歯後疼痛を主訴として来院した。既往歴に乳癌があり,骨粗鬆症の治療中である。現病歴は2022 年3月に近在の歯科医院でを抜歯し,経過が不良で当科紹介となった。部に骨露出と排膿を認め,疼痛で食事摂取量が減少傾向にあった。
経過:治療上の問題点として乳癌の治療歴と骨粗鬆症の治療中であること,骨露出や排膿を認めていること,食事摂取量が減少していること(QOLの低下)が挙げられた。医科への対診で患者はBP製剤を5年間内服していたことを確認した。患者はADLが自立し,ARONJ の局所的修飾因子が少ないことから,2022年7月にARONJ(stageⅡ)の診断下に全身麻酔下で壊死骨の搔爬と周囲骨切除を施行した。術後,創部は良好で,感染や骨露出も認めていない。
考察:今後は,stage分類に限らず外科的療法への移行を積極的に検討することが必要になる。一方で,保存療法を施行する期間は十分な検討が必要で,外科的治療へ移行を円滑に進めることが今後はより重要になると考えられた。
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