2025 年 40 巻 2 号 p. 121-128
高齢者の歯科訪問診療時の飛沫飛散に対し,ポータブルユニット付属口腔内バキューム(以下,バキューム)使用がどの程度の影響を及ぼすかを検討するため,ファーラー位に固定したファントムに模擬的歯科処置を行った。歯科処置は,歯ブラシによる歯面清掃,マイクロモーターによる歯面清掃,増速用マイクロモーターによる切削とし,微粒子可視化システムにより撮影を行った。飛沫量は測定エリア面積に占める飛沫面積の割合として算出し,その対数値(log10(エリア%))をKruskal-Wallis検定あるいはMann-Whitney U検定により比較した。その結果,今回行ったすべての歯科処置によって,無処置時のバックグラウンドよりも飛沫量が有意に増加した。バキューム吸引により飛沫飛散が有意に減少したのは,マイクロモーターによる歯面清掃,増速用マイクロモーターによる切削であった。また,重回帰分析では,目的変数(log10(エリア%))に対し,すべての歯科処置は正の係数,バキューム吸引は負の係数でいずれも有意であった。歯ブラシによる歯面清掃は,歯科訪問診療で頻繁に実施される処置であるが,バキューム吸引による飛沫飛散の制御が難しいことが示唆された。
本研究により,歯科医療従事者の感染防護のためには,各処置による飛沫飛散状況に基づいて,吸引装置および個人防護具の適正使用と適切な換気に努める必要があると考えられた。