老年歯科医学
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脳卒中片麻痺患者の口腔周囲の知覚異常に関する研究
第1報患側と健側の触覚能の差
加藤 美恵植松 宏梅崎 伸子江面 陽子酒井 信明
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1995 年 10 巻 1 号 p. 42-48

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抄録
脳卒中片麻痺患者の口腔周囲の触覚について, 麻痺側と健側の定量的な測定を行い, 障害の程度を明らかにした。
片麻痺患者34例 (男30例, 女4例, 平均年齢45.6歳) と, 健常者24例 (男22例, 女2例, 平均年齢44.6歳) を対象とした。
触覚の検査はvon Freyの方法にならって実施した。測定部位は三叉神経第2枝領域の上口唇と頬部上方の2ヵ所, 第3枝領域の下口唇と頗部下方の2ヵ所で, 顔面の片側で4ヵ所, 両側合わせて計8ヵ所である。検査はvon Freyの刺激毛で皮膚表面に触れて定量的に評価した。測定は250mgより始めた。そして250mgで知覚した場合を「1」, 500mgで知覚した場合を「2」, 1gで知覚した場合を「3」, 2gで知覚した場合を「4」, 2gでも知覚されない場合を「5」の5段階のグレードで評価した。
その結果, 健常者群では, 24例中2例が延べ192の測定点のうち3ヵ所 (1.6%) でグレード2であった他はすべてグレード1であり, この測定法による正常値は250g以下と考えられた。また, 健常者では触覚閾値の左右差が認められなかった。
片麻痺患者では, 麻痺側の4ヵ所と健側の4ヵ所のグレードを合計した値の平均値を比較すると, 麻痺側の13.64±6.16に対し, 健側は4.68±1.90であり両群間には有意差があった。さらに三叉神経第2枝, 3枝領域別にみても麻痺側と健側の間に有意差を認めた。測定部位別では, 口唇部は頬部より触覚閾値の上昇が少なかった。頭蓋内の病巣部位と触覚障害との関連は明瞭でなかった。咀嚼の習慣は麻痺側で咀嚼するケースが17.86%で, 健側の82.14%に比べて著しく少なかった。その理由は咬んだ感じがしないとのことであった。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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