抄録
在宅診療患者における義歯の汚染状態, 義歯清掃に対する認識と現状を把握するために, 1991年1月から1993年8月までに日本歯科大学新潟歯学部在宅歯科往診ケアチームで義歯を装着した患者のうちリコールに応じた8名を対象として, 義歯の取り扱いを中心にした聞き取り調査, 歯垢染色液を用いたデンチャープラークの染色および微生物学的検査を行った。
聞き取り調査の結果, 義歯装着時に義歯の取り扱い説明を受けたと答えたものは8名中4名で, 口腔内の清掃法について説明を受けたと答えたものは1名だけであった。歯垢染色液でデンチャープラークを染色した結果, 上下顎義歯ともに咬合面および唇側面のデンチャープラークが少なく, 粘膜面および頬側面で多くなる傾向が認められた。デンチャープラークの微生物学的検査の結果, 通性嫌気性グラム陽性球菌が多く認められ, いずれも口腔内常在菌であった。また, Candidaが3種同定されたが, 義歯性口内炎が認められたものはなかった。
我々は, 義歯装着時に患者または介護者に対して義歯および口腔の衛生管理指導を行っている。しかし, 今回の調査結果から, 現在の指導方法ではその内容が十分理解されているとはいえず, 今後はメインテナンスのあり方も含めて改善していく必要があると考えられた。