老年歯科医学
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抗血小板薬服用患者の歯科小手術後経過に関する検討
山崎 博嗣佐野 浩川島 康水野 嘉夫
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1996 年 11 巻 1 号 p. 3-9

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抄録

歯科臨床において, 高齢者では合併症を有している患者が増加し, 種々な薬剤を服用している場合が多い。なかでも抗凝血薬服用中の患者に対して抜歯を主とする歯科小手術を行った際の後出血が問題となる。経口抗凝固剤に関しては報告例も多く, 対処法についてもほぼ判明している。また, 主として血液透析患者に用いられるヘパリン類は, その半減期を考慮しなければならない。一方, 抗血小板薬は理論的には血小板の寿命のあるうちは効果があるが, 歯科小手術時の後出血の有無についての報告は僅かであり, その取扱い方は一定していない。そこで, 今回われわれは, 抗血小板薬服用患者20名に対して抜歯を主とする小手術 (抜歯33回, 舌良性腫瘍摘出1回) を, 抗血小板薬の服用を中止せずに行い, 経過観察を行い検討した。局所麻酔薬には1/8万エピネフリン添加2%キシロカイン ® (塩酸リドカイン) を使用し, 術中は, 8チャンネルポリグラフあるいは自動血圧計を用いた監視を行った。
その結果は以下の如くであった。
1.後出血をきたしたのは, 1症例1回だけで, パナルジン ® 単独使用例であり, 通常の抜歯後の圧迫止血を行った症例であった。
2.手術創の縫合と通常より長めの圧迫止血を行った症例では, 後出血は認められなかった。
3.歯科医は, 抗血小板薬の適応疾患の拡大あるいは, 作用機序の異なる新薬開発の可能性に対応していく必要があると考えられた。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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