1999 年 13 巻 3 号 p. 205-213
良好な予後を演出する総義歯調製は, 如何に進めるべきであるかを, 装着後調整の部位および回数について検討した結果, 以下の結論を得た。
1. 装着後の調整部位は上下顎ともに床縁および粘膜面が多く, 咬合調整の占める割合が少なかったことより, 歯科医師は, 調整での咬合調整の重要性と, 画一的でなく各個の患者に適した診療術式の選択に配慮する必要がある。
2. 装着後の調整回数は5回が最も多く全無歯顎患者の約68%が2~8回であったが, 10回以上の調整回数の無歯顎患者が約22%存在していたことより, インフォームドコンセントの確立のみならず各調製過程で患者の理解を得るべく努める必要がある。
3. 総義歯の経験年数と調整回数とは, 経験年数の長短が調整回数の多少に及ぼす影響は認めなかったことより, 設計を含めた診療方針が重要な意味を持つと言える。
4. 顎堤の吸収程度と調整回数は, 全無歯顎患者で顎堤吸収程度が強であるほど多数回の調整を必要としていたが, 調整回数10回以上の無歯顎患者においては, この傾向は認めなかった。調整回数10回以上の患者では, 両者に関連性を認めなかったことより, 患者の総義歯に対する希望を聴取し, 心理的な面に配慮することが早期に良好な予後を作り出すことに繋がると言える。