老年歯科医学
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パーキンソン病患者の義歯取扱い能力に関する長期臨床的検討
中村 広一
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1999 年 14 巻 1 号 p. 3-6

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抄録
本報告では巾等度進行例のパーキンソン病患者7例 (男性4例, 女性3例, 平均62.4歳) を対象に, 義歯装着所要時間 (以下, “所要時間”) を指標として義歯取扱い能力の長期的 (平均2年4ヵ月間) 観察を行い, 対照の62歳女性の慢性分裂病患者と比較して検討を加えた。対照も含め全例が上下顎床義歯装川者であった。
その結果, 対象の “所要時間” は著しい延長と人きなばらつきを示し, 対象のパーキンソン病患者における義歯取扱い能力の著しい低下は明らかであった。
また対象の “所要時間” には不規則な経時的変動が目立ち, 装着不能を示した2症例ではことに大きなものであった。これらはL-DOPAの長期療法で問題になるwearing-off現象やon-off現象の影響を受けたものと考えられた。
60秒以上の “所要時間” を示した4例では, 手指動作の緩慢ないし停止が全例に, 口唇の伸展不十分が2例に, 鉤の微妙な位置合わせの困難が2例にみられた。
以上の検討からパーキンソン病の進行症例における義歯取扱い能力は, 原病の緩徐な進行に伴って単調に低下する一方, 薬物によるコントロールの良否という要素が修飾的に加わり不安定な状態で経過することが示唆された。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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