老年歯科医学
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高齢者の口腔常在微生物叢に関する研究
第1報施設入居者と自宅生活者の比較
譽田 英喜武藤 隆嗣前田 伸子松本 亀治森戸 光彦
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2000 年 14 巻 3 号 p. 297-306

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抄録

常在微生物叢と宿主の均衡関係が破綻すると, 通常は無害であるはずの常在微生物が日和見感染発症の原因になることがある。加齢はこの均衡関係を崩す要因の1つと考えられている。本研究は特別養護老人ホームに入居している高齢者 (施設群) を対象に口腔常在微生物叢の検索を行い, 自宅で生活を営んでいる高齢者 (自宅群) と比較検討した。
施設群として3施設 (111名), 自宅群として2群 (72名) を対象とした。口腔診査後, 唾液量, 唾液緩衝能, 唾液中のmutans streptococciとlactobacilliの菌数, 舌表面のCandidaとstaphylococciの菌数, メチルメルカプタン (CH3SH) 産生量を測定した。
唾液量, lactobacilliの菌数, CH3SH産生量は両群間で顕著な差が見られなかったが, 緩衝能は施設群の方が自宅群よりも低い傾向が, またCandidaとstaphylococciの菌数は施設群の方が自宅群よりも有意に多かった。
さらに施設群の一部に口腔衛生指導を行い, その効果を検討した結果, 唾液量, mutans streptococciの菌数, CH3SH産生量は指導後に改善したが, Candidaの菌数はほぼ同値であった。
以上のことから, 施設群の高齢者では日和見感染症の病原体であるCandidaやstaphylococciが多いことが示唆された。また, 今回試みた口腔衛生指導ではCandidaを減少させることは困難であることが示唆された。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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