老年歯科医学
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要介護高齢者の口腔ケアにおける舌ブラシの効果に関する研究
金子 昌平梁 洪淵
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2002 年 17 巻 2 号 p. 107-119

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抄録

日和見感染症の原因微生物の一つであるcandidaの検出率は要介護高齢者の口腔で高く, その菌数も多くなることが知られている。一方, 要介護高齢者の口腔ケアには介護者の介助が必要とされるが, 介護者の口腔ケアに対する認識は必ずしも高くない。本研究では, 舌ブラシによる口腔ケアを指導することにより, 口腔ケアに対する認識を高め, しかもCandida菌数を減少させることができるかどうかとCandida菌数の減少が口腔内あるいは要介護者の生活行動に与える影響にあわせて検討した。要介護高齢者33名, 歯科外来に通院する高齢者 (外来群) 34名の計67名を被検者として舌ブラシによる清掃指導を行い, 指導前, 指導後44日 (指導後1), 99日 (指導後2) に舌背部のCandida菌数を調べた。口腔内診査は指導前と指導後2に, アンケート調査は指導後2に行った。Candidaの平均菌数は要介護者の方が外来群よりも指導前, 指導後1・2のいずれの場合でも多く, 両群間で統計学的に有意な差があった。また, 要介護者ではCandida菌数の減少により, 口腔内清掃状態が良好になり, 味覚改善と健康の自覚が得られ, 唾液の増加, 食事内容の変化があり, 発音改善も得られた。今回の結果から, 舌ブラシの使用は効果的にCandida菌数を減少させ, 口腔衛生管理に有効であることが示唆された。また, Candida菌数の減少は要介護高齢者の生活行動の変化をもたらすことが示された。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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