老年歯科医学
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リハビリテーション科外来を受診した脳血管障害の既往のある高齢者の医学的・歯科医学的特徴と歯科治療の必要性
片倉 伸郎山本 あかね小宮山 ひろみ藤島 一郎植松 宏
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2002 年 17 巻 2 号 p. 143-155

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抄録

脳血管障害は高齢者にとって頻度の高い疾患で, 今後さらに増加することが考えられる。本研究では, 脳血管障害の既往のあるものの医学的・歯科学的特徴を明らかにするために, リハビリテーション科外来を訪れた282名に全身状態と日常生活自立度, 口腔内所見, 口腔衛生管理に関して調査を行い検討した。
対象者は平均66.1±11.4歳で, 65歳以上の高齢者は155名であった。脳梗塞が159名, 脳出血が116名, くも膜下出血が19名で, 経過症状として片麻痺が最も多く220名に認められた。日常生活自立度ではランクJ, Aが全体で82.6%を占め, 機能的自立度では, 移乗や歩行に修正自立の割合が多かった。いずれの要素も高齢者で自立度の低下が認められた。現在歯数は平均7.7歯で, 高齢者群では4.5歯に減少した。喪失歯数は平均11.6歯, 高齢者群では15.5歯で, 喪失歯数の増加とともに義歯補綴を要する対象者が高齢者で増加している。治療や指導の必要があると判断された者は全体で72.6%, 高齢者で70.3%であるが, 治療を希望するものは全体で31.9%, 高齢者群では29.7%であり, 多くのものが, 治療の必要性がありながら治療を希望していなかった。今回対象となった患者は通院可能であるが, 歯科治療に対する動機付けが不十分で, 移乗や歩行に何らかの問題を抱えるものが多く, 歯科医療機関へのアクセスに関して十分な配慮が必要と考えられた。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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