老年歯科医学
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全部床義歯患者の義歯安定剤の使用に関する調査
守澤 正幸早川 巖
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2002 年 17 巻 2 号 p. 135-142

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抄録

義歯安定剤を使用している全部床義歯装着者の特徴を調べ, 適切な対応方法を検討するため, 東京医科歯科大学歯学部附属病院での臨床実習で上下顎全部床義歯を製作した160名 (男性66名, 女性94名, 平均年齢73歳) を対象に, 口腔内および新旧義歯の診査とアンケート調査を行い, 以下の結果を得た。
1. 旧義歯に義歯安定剤を使用していた患者は, 160名中44名 (男性23名, 女性21名, 平均年齢74歳) であった。
2. 義歯安定剤使用者群は義歯安定剤不使用者群に比べ上顎顎堤の高さが低い傾向を示していたが, その他の顎堤状態と義歯安定剤の使用の有無との間には関連は認められなかった。
3. 義歯安定剤の使用の有無と旧義歯の床縁の長さ, 適合, 安定および維持との間には関連が認められなかった。
4. 義歯安定剤使用者群は義歯安定剤不使用者群に比べ旧義歯に対する満足度が有意に低かった。
5. 義歯安定剤使用者群は, 義歯安定剤不使用者群に比べ新義歯装着後の調整回数が有意に多かった。しかし, 新義歯は旧義歯に比べて有意に満足度が高く, 咀嚼能力も有意に大きかった。
従って, 義歯安定剤使用者において適切な治療を受ければ, 良好な新義歯の製作が可能であることが示唆された。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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