抄録
高齢社会に入り, 味覚障害を訴える人々が多くなってきている。なかでも亜鉛不足を原因とする味覚障害が過半数をしめている。本研究の目的は亜鉛投与が味覚障害患者に有効であるかどうかを, 投与前後でTIMP-1レベルを測定することで比較検討した。 (この酵素の健常者と比較して味覚障害患者では低下していることはすでに報告ずみである) 。
方法として亜鉛不足が原因と思われる7人 (52-82歳) の患者から採取した刺激唾液を遠心分離し, その上清をSandwich-Enzyme-immunoassayシステムでTIMP-1レベルを測定した。
結果として投与前は130.7±S. D.57ng/mlであり, 投与後は192.2±S. D.42.6ng/ml (p<0.01) であった。
結論として亜鉛不足が原因の味覚障害患者の唾液中TIMP-1レベルは低く, このことは亜鉛投与で上昇した。