老年歯科医学
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老人の口腔の実態に関する調査
活発な社会活動を行っている者に関して
山口 雅庸大塚 寿樹石山 直欣渡辺 郁馬大竹 登志子
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キーワード: 老年者, 健常, 口腔衛生
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1988 年 2 巻 1 号 p. 65-73

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抄録

1987年3月に, 社会活動を活発に行っている老年者の口腔実態を調査した。
調査対象群は武蔵野市て社会活動を活発に行っている65歳以上の老年者56名て, うち男性は21名, 女性は35名てあった。
調査方法はインタヒュー形式のアンケートおよひ口腔診査とした。調査結果は,(1) 平均年齢は724歳てあった。うち, 男性は最若年齢か66歳, 最高年齢か84歳, 平均か748歳てあり, 女性は最若年齢か65歳, 最高年齢か82歳, 平均か710歳てあった。 (2) 現在歯数は最低か0歯, 最高か30歯, 平均か195歯てあった。うち, 男性は最低か79歳の0歯, 最高か66歳の30歯, 平均か167歯てあり, 女性は最低か71歳の0歯, 最高か76歳の29歯, 平均か164歯てあった。このうち現在歯数か20歯以上の例は25名45%, うち男性か9名43%, 女性か16名46%てあった。 (3) 平均現在歯数のうちわけは健全歯およひ齲蝕処置歯か157歯てあり, うち男性は152歯, 女性は160歯てあった。齲蝕未処置歯は08歯てあり, うち男1生は13歯, 女性は04歯てあった。要抜去歯は01歯てあり, うち男性は02歯, 女性か00歯てあった。 (4) 1日あたりの口腔清掃回数は2回か最も多く, 全体の518%, 次いて1回か321%, 3回か107%, 4回か54%てあった。 (5) 口腔の清掃状態は良好か全体の278%, 普通か463%, 不良か259%てあった。男女別ては男性における不良か350%, 女性における不良か206%てあった。 (6) 男性の810%, 女性の800%か義歯を所有していた。 (7) 義歯の使用感は上顎においては良好か742%, 普通か161%, 不良か64%てあり, 使用していない例か32%てあった。下顎においては良好か512%, 普通か195%, 不良か171%てあり, 使用していない例か122%てあった。使用感か不良な例と使用していない例の和は上顎か97%, 下顎か293%てあり, 上顎に比へ, 下顎ては3倍の率となった。 (8) 義歯使用者の咀嚼状態の良否は良好か全体の422%, 普通か378%, 不良か200%てあった。 (9) 義歯使用者の義歯の清掃状態は良好か全体の425%, 普通か350%, 不良か225%てあった。男女別ては男性における不良か267%, 女性における不良か200%てあった。 (10) 医療施設に通院している者は全体の607%て, うち男性は524%%, 女性は657%てあった。 (11) 通院科別のうちわけは高血圧症の治療管理を主な目的とした循環器科への通院と白内障の治療を主な目的とした眼科への通院か最も大きな比重を占めていた。このほか, 関節・骨格系疾患, 呼吸系疾患, 消化系疾患に対する通院かあった。内分泌疾患や, いわゆるねたきり老人に多い脳血管神経系の疾患はなかった。 (12) 患者の現在の健康状態の自己評価ては893%か5点以上てあり, 男性は7点を中心に4点から10点まて, 女性は5点に評価しているものか多かった。
以上, 調査結果は極めて良好てあった。すなわち, 現在歯数か多く, しかも歯科冶療か充分に行なわれていた。視力, 聴力, 握力や仕事, 家族構成, 友人なとについても大変恵まれた状態にあった。重症の傷病者かいなかったこと, ねたきりの原因となる骨折, 脳血管神経系の疾患およひその後遺症を有する者かおらす, 全員に自律した行動か可能てあり, 口腔の自己管理およひ歯科受療か可能てあったことか好結果につなかったものと考えられる。また, 経済的に恵まれた有産者てあること, 「武蔵野市か全国ても有数の老人福祉サーヒスの充実した自冶体てある。」こともおおいに関連しているものと思われる。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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