老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
Print ISSN : 0914-3866
ISSN-L : 0914-3866
摂食能力簡易評価方法に適するテスト食品の検討
小城 明子柳沢 幸江植松 宏
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 20 巻 4 号 p. 323-331

詳細
抄録

多くの高齢者では加齢あるいは疾病による口腔機能の低下が認められ, それに伴う摂食能力低下に対応した食事を摂取している。我々は, 日常食品の摂取状況から摂食能力を簡単に判断できる方法の確立を目的に, 評価方法と併せて適当なテスト食品の物性検討を行った。
20歳代の若年者28名および70歳以上の地域高齢者26名を対象に, 乾あんず, 食パン, 煮ごぼう, 鶏肉, かまぼこ, マッシュルーム水煮, あられ, 茄でほうれん草, ぶり照焼の9食品を一口量摂取させ, 嚥下直前の食塊を回収した。そして, 食塊中の粒度4mm以上の割合を咀嚼1回当たりに換算した値「大粒度率」を求めた。
大粒度率が高い者ほど咬合状態パラメータ (接触面積, 最大圧, 咬合力) 値が低く, 咀嚼回数が増加した。摂食能力の不足を咀嚼回数で補っている可能性が考えられた。咀嚼回数と相関関係が認められた大粒度率は, 男女ともに煮ごぼう, 鶏肉, あられ, ぶり照焼であった。日常食品としてはやや特殊な特性を有していたあられを除き, 煮ごぼう, 鶏肉, ぶり照焼は, 水分含有率が比較的高くて, あまりかたくなく, 付着性, 凝集性, 弾力性も比較的強くない食品であった。
このような特性を有する食品をテスト食品とし, それらの嚥下までの咀嚼回数から, 摂食能力を簡易に推察できる可能性が示唆された。この方法は, 特別な装置や技術は不要であり, 対象者への負担も少ない。ニーズの高い要介護高齢者施設における実施も充分可能であり, 有用であると考えられる。

著者関連情報
© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top