老年歯科医学
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新規開発粘膜調整材の理工学的性質に関する評価
洪 光前田 武志濱田 泰三
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2007 年 22 巻 2 号 p. 90-100

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抄録

現在日本は高齢社会から超高齢社会を迎え, 総義歯患者も増加するものと考えられる。長時間の義歯装着で生じた義歯床下粘膜の病変を粘膜調整材の使用により生理的状態に回復させることは効果的な治療を進める上で有効である。しかしながら本材は可塑剤の溶出に伴って経時的な機能発揮に必要な柔軟性を失っていくことが大きな問題である。そこで本研究では, 耐久性を改善した新規開発粘膜調整材「ティッシュケア」について, 浸漬液の相違が粘膜調整材の動的粘弾性, 表面性状, コンプライアンスの経時的変化に及ぼす影響について検討した。材料にはティッシュケア (TC) 以外に, 比較のため3種類の市販粘膜調整材のコー・コンフォート (CC), 松風ティッシュコンディショナーII (STC) およびボスワスソフトン (BST) を用いた。浸漬液には蒸留水, 人工唾液, 綿実油を使用した。その結果, 粘弾性特性の経時的変化ではTCが最も安定した傾向を示した。STCは他の材料に比べて, 経時的に安定した表面性状を示した。材料の表面性状には人工唾液が最も影響を与えていた。TCはISO規格を満たしており, 低い初期コンプライアンスのクラスIIに分類された。浸漬液の種類および浸漬時間が材料の動的粘弾性, 表面性状およびコンプライアンスに及ぼす影響は異なっていた。新規開発粘膜調整材「ティッシュケア」は耐久性に優れており, 疼痛緩和, 暫間裏装が主目的で臨床での使用は可能であることが示唆された。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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