老年歯科医学
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歯科治療による高齢者の日常生活活動の改善
層別無作為化対照試験
鈴木 美保
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2007 年 22 巻 3 号 p. 265-279

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抄録

高齢障害者の日常生活活動 (ADL) 能力など全身状態へ及ぼす歯科治療効果に関する介入研究のために, 評価表を作成し, 全国12歯科医師会の協力を得て527名での治療者による層別無作為化対照研究を行った。
その結果, 対照群 (255名) では前・後比較で有意差を認めた項目がなかったのに対して, 治療群 (277名) では意識レベル, ヒトの見当識, FIMの食事・更衣・4項目合計, 歯科医からみたface scaleにおいて後調査が有意に改善していた。口腔機能評価については, 治療群で, 口腔内の痛みと, 口腔乾燥以外の項目に、改善を認めた。
両群の前調査と後調査の差の比較では, 治療群において, ヒトの見当識, FIMの4項目合計, 歯科医からみたface scaleが有意に改善していた。口腔機能評価では, 食べたときの痛み, 歯肉の腫れ, 咀瞬, 上顎義歯着脱自立度, 口腔清掃回数, 清掃用具, 発音の明瞭度に治療群と対照群の差があり, 口腔の客観情報については, 口腔清掃状態の食物残渣, 口臭の改善を認めた。
義歯治療に関連しては, 部分床義歯の場合にADL改善が大きかった。
歯科介入による高齢障害者のADLおよびQOLの改善は, 歯科的問題というADL阻害因子, あるいは阻害因子の発生原因の軽減によるものと考えられた。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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