【目的】本研究の目的は, 舌骨格筋の発生過程におけるBone morphogenetic protein (BMP) の役割を研究することで, 加齢による筋萎縮のための再生療法, リハビリテーションなどに有用な基礎的な情報を得ることである。
【材料・方法】胎齢11, 13, 15, 17日のマウス胎仔, 出生時のマウスより舌を摘出し, 中央部付近の凍結切片を作成し, 酵素抗体法を用いてBMP2および4, BMP受容体 (BMPR) IA, IB, IIおよびアクチビン受容体 (ActR) IA, II, IIBのその局在を解析した。舌筋の分化マーカーである速筋型ミオシンの染色により筋組織を同定した。
【結果】胎齢11日のマウス筋組織においては調べたすべての因子の発現は観察されなかった。BMP2, BMPRIB, ActRI, ActRII, ActRIIBは最も活発に分化している胎齢13~15日のマウス舌筋組織で発現が認められた。筋線維への成熟が開始されている胎齢15日の舌筋組織では, 調べたすべての因子の発現が観察された。しかし, 発現はその後減少し, 出生時まで継続していたのはBMP2, BMPRIA, ActRIA, ActRIIのみであった。
【考察】以上の結果からBMP2, BMPRIB, ActRI, ActRII, ActRIIBは舌筋分化の全過程に, 調べたすべての因子は筋線維への成熟の開始に, BMP2, BMPRIA, ActRIA, ActRIIは成熟の全過程に関与している可能性が示唆された。
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