老年歯科医学
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在宅要介護高齢者の咬合, 摂食・嚥下機能および栄養状態について
伊藤 英俊菊谷 武田村 文誉羽村 章
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2008 年 23 巻 1 号 p. 21-30

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抄録

軽度要介護高齢者の咬合, 摂食・嚥下機能と栄養の状態を明らかにし, 介護予防の基礎データとする目的で本研究を行った。対象は, 東京都内に立地する通所型介護施設の75歳以上の要介護高齢者213名 (男性52名, 女性161名, 平均年齢85.0±5.2歳) である。対象者の歯および咬合状態を評価し, 義歯の使用状況を調査した。また, 天然歯と義歯装着時をEichnerの咬合支持領域を参考に, 咬合支持維持群, 義歯咬合支持維持群, 咬合崩壊群の3群に分けて分析した。嚥下機能は反復唾液嚥下テストにより, 摂食機能不全は食事観察により評価した。栄養状態は身体計測法を用い, 上腕周囲長, 上腕三頭筋皮下脂肪厚を測定し, 上腕筋囲を算出した。これらの値について, 日本人の新身体計測基準値JARD2001の各年齢群, 性別の中央値をもとに身体計測値パーセンタイルとして算出した。
その結果, 以下の知見を得た。
1. 軽度要介護高齢者213名を対象に咬合, 摂食・嚥下機能と栄養の状態を調査し, 介護予防の基礎データを得ることができた。
2. 臼歯部の咬合支持を失っている者が約80%に認められ, このうち約20%の者が補綴修復処置をされていなかった。
3. 嚥下機能が障害されていると判断された者は22%に認められ, その多くは咬合状態が悪化していた。
4. 嚥下機能が障害されている者や摂食機能不全を表す者は, 栄養状態の低下が認められた。
5. 咬合支持の喪失者は, 栄養状態が低下していた。
以上のことより, 軽度要介護高齢者においては, 咬合, 摂食・嚥下機能が低下している者が認められ, これらと栄養状態との関連が示唆された。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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