老年歯科医学
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中高齢者の抑うつに関わる歯科的要因
大迫研究
大井 孝栗本 鮎美板橋 志保三好 慶忠水戸 祐子水尻 大希服部 佳功伊藤 理恵鈴木 和広細川 彩平野 幹雄大久保 孝義細川 徹粟田 主一今井 潤渡辺 誠
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2008 年 23 巻 3 号 p. 308-318

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抄録

目的: 中高齢一般住民を対象に, 抑うつスコアと口腔状態および口腔の健康意識との関連を明らかにすることを目的に疫学調査を実施した。
方法: 岩手県大迫町の55歳以上の一般住民で, 抑うつの自己評価尺度 (Zung自己記入式うつ病スケール: SDS) ならびに身体や社会環境についての背景因子に対するアンケート調査, 歯科検診を受診した208名 (平均年齢67.2±6.7歳, 女性65.4%) を対象に, SDSと歯科検診項目との関連を, 横断的に検討した。
結果: SDSと関連する背景因子は, 身体活動度, 主観的健康度, 収入, ソーシャルサポート, 過去1年間の環境変化であった。歯科検診項目では, 口腔の問題による日常生活の制限 (Oral Impacts on Daily Performances: OIDP) があること, 自己評価による顎口腔の問題が4項目以上あること, および食事時の問題があることの3項目がSDSの高値と関連していた。さらに, これら3項目のうち, 口腔の問題による日常生活の制限は背景因子での補正後も有意な関連を示した。一方, 口腔状態の客観的指標である現在歯数, 要処置歯, 欠損歯の放置, 歯周状態とSDSとの間に関連は認められなかった。
結論: 口腔状態の客観的評価によらず, 口腔に関わる不健康感は, 全身の主観的健康指標や社会環境要因と独立して, 抑うつスコアの高値と関連していた。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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