抄録
心エコー法は, 心房心室の肥大や拡大, 弁膜の変化, 壁運動の異常, 心膜液貯留, 心腔内血栓や腫瘍, 心奇形などの知見や心拍出量, 駆出率, 左室内径短縮率など心収縮機能についての情報を非観血的に得るのに有用な手段である。
今回, 我々は心血管系の管理が必要であると思われた患者の歯科治療前に心エコー図を記録し, Gerstenblithらの調べた健康成人の心エコー図と比較検討した。
対象は昭和63年6月から平成元年5月までの間に大阪大学歯学部附属病院リスク患者総合診療室を受診し, 歯科治療時に心血管系の管理が必要と思われた45歳以上の成人患者で, 心エコー図が満足に記録しえた12名である。Gerstenblithらの結果と比較して, 心血管系の管理が必要と思われた患者では, 僧帽弁拡張期後退速度, 左室内径短縮率, 平均心筋収縮速度などの低下の程度や弁膜の石灰化, 肥厚の程度が進行している場合が多かった。また, 虚血性心疾患や弁膜疾患の既往のある患者では, 壁運動の異常や低下が見られた。
以上の結果より, 心エコー法を用いると心臓に関する解剖学的知見や心収縮機能などに関して具体的かつ客観的情報が得られるため, 歯科治療中の合併症の予防や発生した合併症に対するより適切な対策を前もって立てることができると考えられる。