老年歯科医学
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心臓ペースメーカーを植え込んだ高齢者4症例の歯科治療経験
佐野 浩山崎 博嗣菊池 章宏須藤 剛佐藤 広一道脇 健一河野 孝栄平井 基之尾崎 卓弘川島 康住野 清一水野 嘉夫
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1991 年 5 巻 1 号 p. 49-59

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抄録

近年, 人口の高齢化に伴い高齢者を取り扱う機会が増加している。高齢者ではペースメーカー植え込みの適応である不整脈の出現頻度も高い。一方ペースメーカー植え込みの適応が拡大し, ペースメーカーを植え込み日常生活を営んでいる高齢者は少なくない。
今回我々は, ペースメーカーを植え込んだ70歳以上の4名の高齢者に対して, 局所麻酔下に計16回の歯科処置を行った。処置中は8チャンネルポリグラフを用い経時的に心電図, 脈波, 呼吸などの連続記録と同時に頻回の血圧測定を行った。
2症例は, 処置直前から処置終了までペースメーカーリズムだけで処置を終えた。他の1症例は, 麻酔中・処置中に血圧の上昇とともにペースメーカーリズムのみから自発心拍が出現した。他の1症例は, 処置直前には自発心拍であったが, 麻酔中・処置中に血圧の軽度の低下と徐脈が出現し, ペーシングが行なわれた。この2症例の循環動態の変化には自律神経系の関与が考えられた。
ペースメーカーを植え込んだ高齢患者の歯科処置にあたっては, 問診, 術前検査, 主治医への問い合わせなどにより患者の状態を十分に把握し, ペースメーカーが正常に作動しているのを確認し, 処置中は電磁障害をはじめとする種々のペースメーカートラブルに注意を払う, このためには心電図をはじあとして血圧, 脈波などの監視下に処置を行うことが必要と思われた。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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