老年歯科医学
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高齢歯科患者の知的評価
下山 和弘小田切 一浩内田 達郎安藤 秀二長尾 正憲山崎 久美子
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1992 年 6 巻 2 号 p. 109-115

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抄録
高齢者の精神的特徴のひとつに知的能力の低下が挙げられる。知的能力の低下は歯科臨床の場において円滑な歯科治療を行う上で問題になることが多い。そこで, 高齢歯科外来患者の知的能力の実態を明らかにするために, 東京医科歯科大学歯学部附属病院高齢者歯科治療部を訪れた外来患者を対象に知的評価尺度を用いて調査したので, 報告する。
調査対象は男性34名 (平均年齢76.4歳), 女性33名 (平均年齢75.6歳) の計67名 (平均年齢76.0歳) であった。居住地域は1都4県であり, 付き添いとともに来院した患者はこのうち6名であった。知的評価尺度としては, 長谷川式簡易知能評価スケールおよび岡部式簡易知的評価尺度を用いた。
対象患者は長谷川式簡易知能評価スケールにおいても岡部式簡易知的評価尺度においても同年齢を対象にした他の調査よりも得点が高かった。また治療に際して, 特に配慮が必要と考えられる患者は, 長谷川式簡易知能評価スケールでは知能低下++の7.5%であり, 岡部式簡易知的評価尺度では軽度および中等度痴呆の14.9%であった。長谷川式簡易知能評価スケールによる評価を統制群と比較するとその割合が低かった。これらの結果は, 患者の知的能力の把握が歯科治療を円滑に行う一助となりうることを示している。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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