老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
Print ISSN : 0914-3866
ISSN-L : 0914-3866
老人医療センターからの報告
佐藤 雅志
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 7 巻 2 号 p. 109-115

詳細
抄録
日本の高齢化社会は加速度的に進展し, 65歳以上の老年者は国民総人口の13%を越え, 21世紀初頭には20%を越すものと推定されている。このような背景の中で老年者に対する歯科医療のニーズは高まる一方である。しかし, 高齢化社会に対応するための歯科医学は歴史が浅い上, まだ老年歯科医学講座の開設も4大学のみに過ぎず, 教育面や研究面からみても不十分である。また, 臨床面において老人専門医療機関が少なく, 診療体制においても十分整備されていないのが現状である。
老年者の歯科診療に当たっての基本姿勢は老年者のQOLの向上, つまり「食事が楽しく食べられること」と「口腔内を清潔に維持すること」への援助であると考えている。
それには患者およびその介護にあたる人々とのコミュニケーションを図り, 普段の生活状態などから患者像を的確に把握し, その変化にいっでも対応できる体制で診療すること。
要介護老年者においては, 精神の身体的機能の低下によって口腔への関心が薄れたり, 運動機能障害のため十分に口腔清掃ができず不潔な状態で放置されている事も珍しくない。
口腔清掃は自己管理が基本であるが, 要介護老年者に対しては介護者が積極的に口腔の管理を行うよう指導する。歯科処置が一段落した後は適宜経過観察を行い, 口腔内が清潔に維持されるよう努める必要がある。
著者関連情報
© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top