1993 年 7 巻 2 号 p. 150-156
当研究の目的は, 10年間, 同一地域の同一市民を対象に追跡調査し, 老人病及び老化予防方法の検討を行うことである。特に今回我々は, 口腔内状況を中心に検討し, 調査開始1年目の結果を報告した。
対象は, 東京都小金井市在住の住民, 男性183名, 女性222名の合計405名であった。今回検討を行った調査内容は, 口腔内調査項目として, 天然歯数, 機能歯数, 咀嚼能力試験 (G-1ゼリー使用) の3項目, 他の身体機能調査項目として, 体重, 握力, 平衡機能 (開眼片足立ち時間), 骨塩量 (第三腰椎をDEXAにて測定) の4項目であった。
以上の項目の関連を検討し, 以下の結果を得た。
1) 年齢と口腔内状況の関連を検討した結果, 年齢が高くなるにつれ, 天然歯数, 咀嚼能力の有意な減少, および, 低下が認められたが, 機能歯数との相関は認められなかった。
2) 口腔内状況と咀嚼能力の関連を検討した結果, 天然歯数が, 多いほど有意に咀嚼能力が良好であったが, 機能歯数との相関は認あられなかった。
3) 年齢性の影響を除外したうえで, 咀嚼能力と全身機能との関連を検討した結果, 咀嚼能力が良好なほど, 体重, 握力, 平衡機能, 骨塩量の値は有意に高値であった。
なお, 当研究は中年からの老化予防総合的長期追跡研究の一環として行われた。