2021 年 59 巻 1 号 p. 9-19
胃X線検査は長年にわたり胃がん検診の重要な検査法として用いられてきた。X線画像には胃病変の形態を直接的に描出するだけでなく,広く背景粘膜の性状を示現できる利点がある。この特性を取り入れた早期胃癌の診断法が「胃癌の三角」である。胃癌の三角は,胃癌の背景粘膜を固有腺と腸上皮化生,病理組織型を未分化型と分化型,肉眼型を陥凹型と隆起型にそれぞれ分類し,三つの要素を互いに関連付けることで局所診断の精度を高める診断理論である。これに加えてX線画像の背景粘膜所見と粘膜襞(ひだ)の性状や分布から胃炎と萎縮の程度を評価しHelicobacter pylori胃炎を診断すると,受診者の胃がんリスクを予測することも可能である。本稿では「胃X線検査の現状と展望」をテーマとして,がん検診の視点から胃X線診断法の足跡を振り返り,病変の局所診断と背景粘膜診断について概説した。更に,コンピュータ技術を取り入れた新しい胃X線診断法の研究についても紹介し,将来の展望を述べた。