2022 年 60 巻 4 号 p. 624-638
腹部超音波検診は,人間ドックなどで広く実施されているが,十分な精度管理がされていなかった。2014年4月,日本消化器がん検診学会,日本超音波医学会,日本人間ドック学会が共通で腹部超音波検診判定マニュアルを発行した。2014(H26)年度から2018(H30)年度の全国集計はマニュアルに基づいて実施され,超音波装置やカラードプラ法などの機能については基準を満たしているが,検査時間や記録画像枚数は施設間格差がみられることがわかった。一方,マニュアル導入後がん発見率は向上がみられ,カテゴリー4からのがん発見が最も高く,次いでカテゴリー3,5から発見され,カテゴリー0,1,2からのがん発見は殆ど認めなかった。腹部超音波検診発見癌は,ステージIが最も多く,切除術による治療が6割以上であった。しかし,カテゴリー不明の症例が多くみられ,マニュアルのさらなる普及が必要と考えられる。
今回,全国集計結果やアンケートを元にマニュアル改訂した。今後マニュアル改訂版をさらに普及し,精度の高い腹部超音波検診を実施することで,がん検診の有効性評価が可能になることを期待する。