日本消化器がん検診学会雑誌
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60 巻, 4 号
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巻頭言
総説
  • 平井 都始子
    2022 年 60 巻 4 号 p. 624-638
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
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    腹部超音波検診は,人間ドックなどで広く実施されているが,十分な精度管理がされていなかった。2014年4月,日本消化器がん検診学会,日本超音波医学会,日本人間ドック学会が共通で腹部超音波検診判定マニュアルを発行した。2014(H26)年度から2018(H30)年度の全国集計はマニュアルに基づいて実施され,超音波装置やカラードプラ法などの機能については基準を満たしているが,検査時間や記録画像枚数は施設間格差がみられることがわかった。一方,マニュアル導入後がん発見率は向上がみられ,カテゴリー4からのがん発見が最も高く,次いでカテゴリー3,5から発見され,カテゴリー0,1,2からのがん発見は殆ど認めなかった。腹部超音波検診発見癌は,ステージIが最も多く,切除術による治療が6割以上であった。しかし,カテゴリー不明の症例が多くみられ,マニュアルのさらなる普及が必要と考えられる。

    今回,全国集計結果やアンケートを元にマニュアル改訂した。今後マニュアル改訂版をさらに普及し,精度の高い腹部超音波検診を実施することで,がん検診の有効性評価が可能になることを期待する。

原著
  • 満崎 克彦, 野村 美緖子, 福永 久美, 坂本 祐二
    2022 年 60 巻 4 号 p. 639-649
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    [早期公開] 公開日: 2022/03/07
    ジャーナル フリー

    【目的】人間ドック胃内視鏡検診で発見された除菌後胃癌を対象とし,除菌後長期間経過した後に発見される胃癌の特徴を明らかにし,除菌後に必要なサーベイランス期間を検討する。

    【対象および方法】2009年4月~2019年10月までに発見された胃癌289例中,除菌後胃癌45例(早期癌44例,進行癌1例)である。除菌後胃癌の発見率の年次推移および臨床病理学的検討を行った。さらに,除菌後5年以内と10年以上経過後の発見胃癌について臨床病理学的な比較検討を行った。

    【結果】除菌後胃癌発見率は年々漸増し,直近の4年間では発見胃癌の34.2%を除菌後胃癌が占めていた。男性が多く,陥凹型(0-IIc)で分化型が多く,M,L領域に多く発生していた。除菌後5年以内の胃癌30例(66.7%)は,中等度~高度の萎縮粘膜に分化型癌の発生が多いが,除菌後10年以上経過後の胃癌9例(20.0%)は,軽度~中等度の粘膜萎縮が多く,未分化型が9例中5例(55.6%)と半数以上を占めていた。

    【結語】除菌後胃癌は除菌後10年以降にも20.0%が発見されており除菌後の継続したサーベイランスは長期間必要である。除菌後10年以上経過後は,軽度~中等度の胃粘膜萎縮を背景に未分化型癌の発見頻度が増加する。

経験
  • 遠藤 広貴, 水口 昌伸, 鶴岡 ななえ, 白石 良介, 下田 悠一郎, 緒方 伸一, 江﨑 幹宏
    2022 年 60 巻 4 号 p. 650-656
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    胃がん患者発生率が高い佐賀県では現在,小児未成年・若年成人・中高年の年代別に予防も考慮した胃がん検診・対策に積極的に取り組んでいる。まず小児未成年には2016年度から,一次予防として県内15歳全員を対象にピロリ菌(Helicobacter pylori: H. pylori)検査と除菌までを全額公費で賄う「未来へ向けた胃がん対策推進事業」を開始しており,3年間で21,368名の参加が得られている。次に公的検診非対象者である若年成人層はH. pylori除菌による胃がん予防効果が高いことから,県内全20市町中13市町でH. pylori検査補助などが行われている。また中高年層では,従来からの上部消化管X線検査を用いた胃がん検診に加え,2017年度から県単位での対策型胃内視鏡検診を導入している。50~60歳代の偶数年齢を対象とし,実施登録施設数は2017年から2020年度まで順に17,53,73,92施設,受診者数は順に82,544,797,948名,胃がん発見は4年間で6例であった。2020年度には県内全20市町の参加が得られたが,今後は一層の受診者の増加が必要である。加えて2018年度には佐賀県健康福祉部健康増進課に「がん撲滅特別対策室」が設立された。これらの対策により今後佐賀県の胃がん患者が減少することを期待したい。

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