2023 年 61 巻 3 号 p. 319-329
【はじめに】我々はICT(information and communication technology)を活用した新たな対策型胃がん内視鏡検診システム(新システム)を導入した。新システムで受診者の不利益を減少させることができるかを検討した。
【対象と方法】2008年度~2019年度(新システム導入前)の内視鏡検診受診者155,312人および2020・2021年度(新システム導入後)の内視鏡検診受診者23,802人(うち14,056人が新システム利用)を対象とした。従来の検診における受診者の不利益として①受診者データの紛失, ②検診票の誤記入・OCR伝票の読み取りエラー・手入力のミス, ③受診者への検診結果の通知ミス, ④読影画像のバックアップ容量不足を抽出し, 新システムでその不利益が減少するかを検討した。また医師会職員の事務負担を評価した。
【結果】受診者データの紛失, 検診票の誤記入, 転記ミス, 検診結果の通知ミスはほぼ皆無に制御された。10年分の画像データの保存が可能となった。事務作業負担は1年目47%, 2年目は70%軽減された。
【結語】我々はICTを活用し, 胃がん内視鏡検診受診者の不利益を減少させるリスクマネジメントシステムを構築することができた。人為的ミスを防ぎ, 正確で効率的な検診が可能となった。