日本消化器がん検診学会雑誌
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61 巻, 3 号
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巻頭言
特別寄稿
総説
  • 赤羽 たけみ
    2023 年 61 巻 3 号 p. 283-291
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    わが国の対策型胃がん検診において内視鏡検診の導入が進められているが, 医療資源の乏しい自治体では導入が困難なことが多い。そのため, 胃X線検診は今後も重要な位置を占めると予想される。胃X線検査の読影医の減少が深刻な問題となっており, 本学会では, 「胃がん検診専門技師による読影補助認定制度」を設けた。この制度によりチーム医療の推進と効率的な検診が期待される。内視鏡検診においては, AIの補助による検診の質の向上と効率化が期待されている。胃X線検診では, 胃がん高リスク群としてカテゴリー2としているが, 胃内視鏡検診ではカテゴリー2に相当する判定区分は存在していない。近年, 食道がん罹患数の増加など上部消化管疾患は大きく変遷している。胃がん検診においても食道がんの拾い上げが重要であり, 特に内視鏡検診においては, 画像強調観察を併用し食道も注意して観察すべきである。咽喉頭や十二指腸を検診の対象臓器とするかは今後の検討課題である。検診の評価のためには追跡調査が重要であるが, 確実に実施できているとは言えない。国が進めている医療情報のデジタル化により, 今後検診と診療との情報共有が可能になり, 精度管理体制の再構築も可能となるであろう。

  • 李 善暎, 中島 滋美
    2023 年 61 巻 3 号 p. 292-306
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    韓国のがん検診は対策型と任意型のデータが統合されているため大規模データの詳細な解析が可能である。胃がん検診は内視鏡とX線が選択でき, 死亡率減少効果により内視鏡検診は40-74歳で2年毎実施を推奨, 85歳以上は不実施を推奨, 胃X線検診は不推奨とされた。2020年の内視鏡受診者は90.8%だったが, 内視鏡医が働き過ぎないよう予約システムが効率化されている。住民登録番号に基づく検診データ管理により胃がん検診受診率は2010年の44.7%から2019年に62.9%に上昇した。2020年の胃がん・腺腫発見率は0.48%であった。人口10万対胃がん発生率は年率0.2-4.6%で減少し続け, 人口10万対胃がん死亡率も1985年の57.6人から急速に低下し, 2012年には日韓が逆転し2019年に7.1人となった。胃がん患者の5年生存率は1993-95年の43.9%から2015-19年の77.5%へ上昇し, 内視鏡検診による早期胃がん割合増加の反映が想定された。H. pylori感染率低下や除菌実施率上昇が日本と同様進んでおり, 今後は生誕年や感染状態の違いによる胃がん検診方法選択の可能性が模索されている。

原著
  • 浜本 哲郎, 高野 友爾, 岸本 幸廣, 矢倉 征道, 山澤 学志, 上野 裕介, 松井 孝文, 池嶋 道夫, 磯本 一
    2023 年 61 巻 3 号 p. 307-318
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【背景】大腸がん検診で便潜血反応が陽性だが, 過去の大腸内視鏡検査(CS)の苦痛等のためにCSを希望しない例(CS拒否例)や, CSで全大腸の内視鏡観察が困難な例(TCS困難例)に対する大腸CT検査(大腸CT)の意義について検討した。

    【対象と方法】検診で便潜血が陽性のCS拒否例あるいはTCS困難例で, 2012年5月から2022年4月までに大腸CTを施行した261症例に対して, CT Colonography Reporting and Data Systemを用いて病変の発見状況について検討した。

    【結果】大腸CTで6-9mmの隆起性病変17例, 1cm以上の隆起性病変5例, 悪性腫瘍を疑う腫瘤1例が発見され, 最終的に3例の大腸癌, 1例のMALTリンパ腫, 2例のadvanced adenomaが確定診断された。大腸CTでの大腸癌発見率は1.1%(3/261)だった。また, 腸管外病変として, 膵癌1例, 小腸間膜原発消化管間葉系腫瘍1例も認めた。

    【結語】便潜血陽性のCS拒否例やTCS困難例に大腸CTを行うことは, 大腸癌の早期発見のために有意義であると思われた。

経験
  • 竹内 正勇, 鍛治 恭介, 高畠 一郎, 大野 健次, 土山 寿志, 代田 幸博, 山口 泰志, 魚谷 知佳, 羽柴 厚
    2023 年 61 巻 3 号 p. 319-329
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】我々はICT(information and communication technology)を活用した新たな対策型胃がん内視鏡検診システム(新システム)を導入した。新システムで受診者の不利益を減少させることができるかを検討した。

    【対象と方法】2008年度~2019年度(新システム導入前)の内視鏡検診受診者155,312人および2020・2021年度(新システム導入後)の内視鏡検診受診者23,802人(うち14,056人が新システム利用)を対象とした。従来の検診における受診者の不利益として①受診者データの紛失, ②検診票の誤記入・OCR伝票の読み取りエラー・手入力のミス, ③受診者への検診結果の通知ミス, ④読影画像のバックアップ容量不足を抽出し, 新システムでその不利益が減少するかを検討した。また医師会職員の事務負担を評価した。

    【結果】受診者データの紛失, 検診票の誤記入, 転記ミス, 検診結果の通知ミスはほぼ皆無に制御された。10年分の画像データの保存が可能となった。事務作業負担は1年目47%, 2年目は70%軽減された。

    【結語】我々はICTを活用し, 胃がん内視鏡検診受診者の不利益を減少させるリスクマネジメントシステムを構築することができた。人為的ミスを防ぎ, 正確で効率的な検診が可能となった。

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