2025 年 63 巻 5 号 p. 591-601
Helicobacter pylori(H. pylori)関連胃がんは今後日本においては減少することが予想され, 従来の画一的な胃がん検診手法は有効性が低下し, 受診者の不利益が増大する恐れがある。検診戦略ごとにがん死亡などのアウトカムを追跡することは多大な労力を要するため, シミュレーションモデルにより戦略の有効性を比較することが多い。胃がん検診の有効性評価は多面的に行う必要があるが, モデルの種類によって実施できる評価方法は異なる。マイクロシミュレーションモデルは個人レベルの変化を追跡することに優れ, 個々人に発生する胃がんの発育進展をシミュレートしながら, 戦略の適用により発見される胃がんの特徴まで特定することができる。対してマルコフモデルを含むマクロ的手法では, 集団全体に検診戦略を適用した場合の費用対効果を明らかにすることができる。将来の胃がん検診においては, H. pylori関連胃がんの有病率が低下した集団を対象にしつつ, H. pylori未感染胃がんを効率的に拾い上げるスクリーニングが実施されるべきであり, 様々なシミュレーション結果を根拠に現行の検診戦略を修正していく必要がある。