論文ID: 20030
【背景】岐阜県山県市では,2017年度から個別胃内視鏡検診に加えて検診車による集団胃内視鏡検診(経鼻)を胃X線検診と併せて実施し4年目を迎えた。
【対象と方法】山県市で胃がん検診(胃X線,個別胃内視鏡,集団胃内視鏡)を受けたすべての受診者を対象(のべ5,575人)とし,胃内視鏡検診導入前後の受診率,要精検率の推移,胃がん検診精度管理評価項目(陽性反応適中度[PPV],がん発見率)を用いた胃X線検診と胃内視鏡検診(個別と集団を合わせたもの)あるいは個別検診と集団検診との比較検討を行った。さらに2017年度に検診車による胃がん内視鏡検診を受けた受診者(325人)と集団胃X線検診受診者(431人)にアンケート調査を行った。
【結果】山県市の胃がん検診受診率は2016年度は5.0%であったが,2017年度以降は11%台に上昇した。また要精検率(内視鏡:2~7% vs 胃X線:8~13%),がん発見率(内視鏡:0.26% vs 胃X線:0.12%)や陽性反応適中度(内視鏡:6.7 vs 胃X線:0.9)はいずれも胃内視鏡検診が胃X線検診を上回っており,精度の高い検診が実践できた。検診車による集団検診受診者に対して行ったアンケート調査では,集団内視鏡検診受診者の約45%は今まで検診を受けていない群であった。今回検診を受けた理由としては「利便性がいい」がもっとも多く(52.3%),交通手段の乏しい山間部の居住者に多い傾向にあった。次に「経鼻であること」が挙げられ(40.0%),利便性だけでなく受容性の向上が受診率増加に繋がったと考えられた。一方,胃X線検診を強く希望する受診者も一定数存在した(4.3%)。
【結語】集団胃内視鏡検診導入により新規受診者の掘り起こしが可能であったが,受診者のニーズは多様であることから,柔軟な検診体制を構築する必要があると思われた。