抄録
福井県全県における胃集団検診の診断精度を評価検討するために, 精度の高い地域がん登録を用いて, 1986年度, 87年度および88年度の胃集団検診偽陰性例を把握し, その臨床病理学的検討を行なった。久道らの定義による偽陰性率は, 86年度27.5%, 87年度29.1%, 88年度31.4%であった。偽陰性例の臨床病理学的特徴として特に,(1) 中間期癌と翌年検診癌がほぼ同数に認められたこと,(2) 中間期癌中の早期癌の割合が検診発見癌・翌年検診発見癌の割合と大差なかったこと,(3) 中間期の進行癌は, 翌年検診発見進行癌よりも累積5年生存率が低い傾向にあったことなどが明らかになった。
追跡法により偽陰性例を観察し, 胃集団検診の精度評価を行う場合には, 精度の高い地域がん登録を用いて検討を行うことが, 最も望ましいと考えられた。