抄録
現行の大腸がん検診の問題点は, 精検受診率の低さと精検処理能不足である。精検法は熟練した内視鏡医の確保が困難なためTCS法より同日併用法や注腸X線検査が採用されているのが現状である。今回併用法とTCS法の診断精度や効率性などの精検上の問題点について検討した。両精検法で発見された大腸癌には形態, 腫瘍径, 深達度, 部位に差はなく, 発見癌数/精検受診者数も差を認めなかった。精検感度は, 併用法で95.7%, TCS法で100%で, さらに1年以降発見癌例を加えた場合には各々89.5%, 98.7%であった。要再精検率は併用法で13.3%であったのに対し, TCS法では6.5%と有意に低く効率的であった。以上より併用法に比べTCS法は診断精度が高く, 精検システムの効率化が得られ, 内視鏡医の育成と技術的熟練度の向上に努めることにより, 精検処理能の向上につながる可能性が考えられた。