2000 年 38 巻 3 号 p. 259-265
癌検診の最終目的である当該癌の死亡率減少効果を定量的に評価する方法として癌検診の数学モデルを用いる方法を提案する。本モデルは検診受診群がいくつかの経路で死亡する数を計算し, それと同じ集団に検診を実施しなかった場合の死亡数で割ることによって相対リスク (Relative Risk: RR), 差し引くことによってリスク差 (Risk Difference: RD) を求めるものである。このモデルに胃癌と大腸癌検診で過去に得られている様々な数値を代入することにより, よい条件では胃癌がRR=0.48, 大腸癌がRR=0.46, 悪い条件ではそれぞれRR=0.66と0.64を得た。RDは胃癌の方がその罹患率の差を反映して大腸癌よりも大きかった。この結果, 両検診とも死亡率減少効果はあると考えられる。モデルによる評価はRCTのような決定的な証拠とはならないが, 検診を始めるにあたっての一つの傍証としての価値はあるものと考える。