1984年1月から1998年12月までに, 当施設で上腹部超音波検診を受検したのべ35854名を対象に, 発見癌と偽陰性癌を検討した。検診における有所見者率は44.6%で, 発見された悪性腫瘍は25例, 発見率は0.07%であった。内訳は, 肝細胞癌5例, 転移性肝癌3例, 膵癌2例, 胆嚢癌7例, 乳頭部癌2例, 腎細胞癌5例, 胃癌リンパ節転移1例であった。検診後に発見された癌のうち, 検診受検時より1年以内に発見されたものを偽陰性癌と定義すると, 偽陰性癌は6例で, 転移性肝癌1例, 膵癌4例, 胆管癌1例, 偽陰性率は19.4%であった。6例中検診時USで異常所見を指摘できなかったもの, あるいは描出不良であったものは3例で, 何らかの異常所見を認め, 事後管理に問題のあったものが3例であった。検診発見癌に比べ偽陰性癌の予後は不良で全例が癌死した。USでの膵描出の改善, 適切な事後管理の実践により, 偽陰性癌を減少させることが必要と考えられた。
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